硬質ポリウレタンフォーム
Rigid polyurethane foam
主な特性
硬質ポリウレタンフォームはプラスチックフォームの中で優れた断熱性能を有しています。これは微細な気泡の中に熱伝導率が極めて小さいガスを閉じ込めているからです。経済的な厚みで優れた断熱性が得られます。又硬質ウレタンフォームは施工現場での発泡が容易で、多くの材料と自己接着しますので複雑な構造物に対しても隙間の無い連続した断熱層を作ることができます。
硬質ポリウレタンフォームの主な特性はJIS規格で以下のように規定されています。
1)吹付け硬質ウレタンフォームの特性(JIS A 9526:2015「建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム」抜粋)
品質 | 種類 | |||||||
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A種1 | A種1H | A種2 | A種2H | A種3 | B種 | |||
原液 | 粘度(20℃) | mPa・s | 80~1,500 | |||||
吹付け硬質ウレタンフォーム | 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.034以下 | 0.026以下 | 0.034以下 | 0.026以下 | 0.040以下 | 0.026以下 |
透湿率 | ng/(m・s・Pa) | 9.0以下 | 9.0以下 | 4.5以下 | 4.5以下 | ー | 4.5以下 |
吹付け硬質ウレタンフォームの種類
種類の区分 | 主な用途 |
---|---|
A種1 | 壁,屋根裏などの用途に適する非耐力性吹付け硬質ウレタンフォーム原液。 |
A種1H | |
A種2 | 冷蔵倉庫などの用途に適する耐力性吹付け硬質ウレタンフォーム原液。 |
A種2H | |
A種3 | 壁などの充填断熱工法用途に用いることができる低密度非耐力性吹付け硬質ウレタンフオーム原液。 |
B種 | 冷蔵倉庫などの用途に適する耐力性吹付け硬質ウレタンフォーム原液。 |
2)硬質ウレタンフォーム断熱材の特性(JIS A 9521:2017「建築用断熱材」抜粋)
種類 | 密度 ㎏/m3 |
熱伝導率 W/(m・K) |
透湿係数 (厚さ25㎜) ng/(m2・s・Pa) |
備考 | ||||
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硬質ウレタンフォーム断熱材 | 1種 | 1号 | 35以上 | 0.029以下 | 185以下 | 外皮材,面材,スキン層なし | ||
2号 | 35以上 | 0.024以下 | 185以下 | |||||
3号 | 25以上 | 0.025以下 | 225以下 | |||||
2種 | 1号 | A | Ⅰ | 35以上 | 0.023以下 | 40以下 | 非透湿性面材付き | |
Ⅱ | ||||||||
B | Ⅰ | 0.022以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
C | Ⅰ | 0.021以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
D | Ⅰ | 0.020以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
E | Ⅰ | 0.019以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
2号 | A | Ⅰ | 25以上 | 0.024以下 | ||||
Ⅱ | ||||||||
B | Ⅰ | 0.023以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
C | Ⅰ | 0.023以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
D | Ⅰ | 0.021以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
E | Ⅰ | 0.020以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
F | Ⅰ | 0.019以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
3号 | Ⅰ | 35以上 | 0.027以下 | |||||
Ⅱ | ||||||||
4号 | Ⅰ | 25以上 | 0.028以下 | |||||
Ⅱ | ||||||||
3種 | 1号 | A | Ⅰ | 35以上 | 0.026以下 | 185以下 | 透湿性面材,透湿性面材及び非透湿性面材付き | |
Ⅱ | ||||||||
B | Ⅰ | 0.025以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
C | Ⅰ | 0.024以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
D | Ⅰ | 0.023以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
2号 | A | Ⅰ | 25以上 | 0.026以下 | ||||
Ⅱ | ||||||||
B | Ⅰ | 0.025以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
C | Ⅰ | 0.024以下 | ||||||
Ⅱ | ||||||||
D | Ⅰ | 0.023以下 | ||||||
Ⅱ |
硬質ウレタンフォーム断熱材の厚さ(JIS A 9521:2017「建築用断熱材」抜粋)
厚さの範囲(㎜) | 呼び厚さに対する許容差 |
---|---|
5以上 20以下 | Ⅰ種の場合:±2 Ⅱ種の場合:+2,0 |
20超 150未満 | Ⅰ種の場合:±2 Ⅱ種の場合:+2,-1 |
150以上 300以下 | Ⅰ種の場合:±5 Ⅱ種の場合:+5,0 |
断熱性能
断熱材として最も重要な性能です。独立した気泡によって構成され(吹付け硬質ウレタンフォームA種3を除く)気泡のひとつひとつに熱伝導率の小さい発泡ガスを含んでいます。これにより優れた断熱性能を発揮します。
自己接着性
他の断熱材にはない優れた特性として、自己接着性があります。発泡する際に接着剤なしで対象物と接着する性質です。
耐水性・耐湿性
一般的に断熱材は水や水蒸気が浸入しますと、断熱効果が低下します。硬質ポリウレタンフォームは独立気泡構造なので、水や水蒸気が浸入しにくく、断熱効果の低下はわずかです。表面にスキン層が形成される吹付け硬質ウレタンフォームや、防水防湿性に優れた面材を使用したラミネートボードは、吸水・吸湿率が小さくなります。(吹付け硬質ウレタンフォームA種3を除く)
使用温度範囲
硬質ポリウレタンフォームは熱硬化性樹脂ですので、熱可塑性プラスチックのような明確な軟化点や融点がありません。一般的には-70℃~+100℃くらいの範囲で使用できます。さらに、特殊配合をすることで-160℃~+150℃くらいまで使用可能にすることができます。
耐薬品性
硬質ポリウレタンフォームは耐薬品性に優れています。濃酸および一部の溶剤を除いては、ほとんどおかされることはありません。
物質 | 安定性 | 物質 | 安定性 |
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海水 | 安定 | 植物油 | 安定 |
弱アルカリ水 | 安定 | 動物油 | 安定 |
ベンゼン | 安定 | 塩化メチレン | 膨潤 |
トルエン | 安定 | アセトン | 膨潤 |
キシレン | 安定 | メタノール | 膨潤 |
ガソリン | 安定 | 濃塩酸 | 膨潤 |
灯油 | 安定 | 濃硫酸 | 安定 |
燃焼性
硬質ポリウレタンフォームは可燃物ですので、フォームが露出している状態では火気には十分に注意する必要があります。
なお、難燃剤や特殊配合をすることで燃えにくくすることができます。